~現役ピアノ講師解説~お子さまへのピアノの指導法

今さら聞けないけどピアノ教材って具体的にどうやって指導するの…?新米講師時代から試行錯誤し、形となった指導法を共有します♪♪

ピアノが嫌いになりそうだった生徒さまのお話

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音楽教室から移ってこられた、当時中学生だった生徒さま(以下Mちゃん)のお話を少し。

 

 

当時、Mちゃんのお母さまからの問い合わせを頂きました。

 

Mちゃんは3歳頃からピアノを始め、小学生までは一生懸命練習をやってきたそうです。

 

中学生になり部活動が忙しく、なかなか練習時間が取れなくなり、両立が難しくなってきた頃。

当時の先生との関係も上手くいかないご様子でした。(少し厳しい先生だったそうです)

ピアノを弾くのもやめたくなってしまったMちゃん。

お母さまより、「環境を変えてなんとかピアノを続けてほしい」、とのご希望でした。

 

 

こちらに移りはじめてのレッスンでは、

モーツァルトソナタを演奏してくれました。

緊張からかとても控えめな演奏でしたが、

繊細な音を持っていて、しっかりと基礎を学んでこられたのが演奏から伝わりました。

 

ひたむきに音楽と向き合ってきたであろうその姿に、心を打たれたのを今でも覚えています。

 

しかし、どこかピアノとの距離があるようにも感じました。

(物理的な距離ではなく、心の距離)

 

お話にも聞いていましたが、

好きでこの曲を弾いているとはとても思えず、切ない気持ちにもなりました。

 

 

ピアノという楽器を通して出会えたご縁を大切に、

Mちゃんにピアノの楽しさを少しずつ取り戻してもらえたらと、

彼女の心と向き合い取り組むことを決めました。

 

まず、これまでクラシック音楽をしっかりと学んでこられたのは演奏から理解が出来たので、

クラシック音楽に拘らず、

JPOPや日本の曲、ジブリ音楽やディズニー音楽、ジャズアレンジに挑戦してもらうことに。

 

 

当初は弾きたい曲の候補も曖昧で、

緊張からなかなか自分の意思を伝えることも難しそうだったので、

様々なジャンルをこちらから提示し1曲ずつゆっくりと弾きこなしていきました。

 

 

そこでMちゃんに伝えていたこと。

 

「音楽に完成はない。最初から完璧な演奏を目指すのではなく、曲のイメージを大切にしたり表現や音色をどの様にしていったら、より音楽的に魅力的になるか、一緒に考えていこう」

 

 「1曲につき、3ヶ月くらいをスパンにやってみよう」

 

 

 

「向上させる、練習をさせる」ことではなく

「楽器の魅力を知る、思い出す」ことに9割の比重を置きました。

しかし、だらだらと弾いていても飽きてしまうし、練習時間に限りもあるので、

ある程度の期限も決めました。

 

完璧になるまで弾くのではなく、

その曲の持つイメージを明確にし、

音の響かせ方や音のバランスを聴き、

音色に意識を持っていくことにしました。

 

 

そしてレッスンでは、Mちゃんの持つ繊細な音色、優しい音色、安定したテンポ感。

Mちゃんの良いところを

その場ですぐに伝える、ということを大切にしておりました。

 

自分で弾いていて、出来ないところ、悪い部分はすぐに見つかっても、

良いところには気づきにくいもの。

 

Mちゃんのピアノに対する自信を、

少しでも取り戻してもらおうと、

声掛けを大切にしました。

 

 

こうして半年程経った頃。

Mちゃんから出る音が少しずつ明るくなり、

以前はあったピアノとの心の距離も少しずつ近づいてきたかな?と感じられました。

 

 

そしてその頃Mちゃんのお母さまより、

 

「先生のお陰で、音楽=音を楽しむ ということを感じてもらえています!

音楽だけじゃなく色んな話もしながら楽しくレッスンをしてくださりありがとうございます!」

と、講師人生で1番と言っても過言ではない、とても嬉しく、ありがたいお言葉を頂けたのです。

 

 

もうそれから何年も経ち、

Mちゃんは自分の人生の目標も明確に持ちながら

今でもピアノ教室に通ってくれています。

 

 

清らかで繊細なMちゃんの音は健在で、

音楽的な表現や音色の幅が豊かになりました。

今では弾きたい曲を積極的に提案、

新曲の楽譜を自分で用意し持ってきてくれます。

 

 

何より、Mちゃんのキラキラとした表情に、

指導をしていて良かった、とこちらが何度も救われています。

 

 

ピアノの指導をしていて、

壁にぶつかることは今後も必ずあるはず。

辞めたい、と思うこともあるかもしれません。

 

 

そんな時、彼女との時間や、

お母さまからのお言葉を思い出し

 

もうひと踏ん張り!!

 

頑張れそうです。

 

 

ピアノという楽器を通して出会えた大切なご縁。

 

これからも大切に胸に刻みながら

ピアノ講師人生、歩んでいきます。